お茶の先輩Oさんは、母と同い年。
お子様がいらっしゃいません。
なので、初めて、お歳を伺った時に、”母と同じです” と申し上げたら、
ーーーあらぁ~こんな大きな子いらないわぁ~
と、心の声が聞こえました。
いつまでもお嬢様のままのような、可愛らしい、上品な方です。
見習いたい事がたくさんありますが、一番は、綺麗な言葉使いです。
”よろしいですか?” ではなく、
”よろしゅうございますか?” とおっしゃいます。
かかあ天下とからっ風の群馬県の片田舎を故郷(← とても良いところです)に持つ私の周りには、こういう言葉使いをなさる方はいらっしゃいませんでした。
柔らかいおっしゃり様が素敵だったので、いつも真似しているうちに、私も自然と よろしゅう派になりました。
お茶のお稽古は、一人づつお点前を見て頂きますが、同時に他の方はお客様のお稽古もしています。
先生は、両方をご指導しつつ、掛け軸などのお道具のこと、お花のことなども教えて下さいます。
先生も人間です。
お点前のミスを見逃すことも、ごくたまにはございます。
Oさんは、私が入門したときには既に準教のお資格をお持ちでしたので、私がお稽古をして頂く小習いなど、百も承知でいらっしゃるのですが、私のミスに気付かれたときは、御自分がうっかり忘れてしまったかのように、先生にお尋ね下さいます。
それをきっかけに、先生の目がお点前の方に戻って、私のお点前が修正されます。
これはとてもありがたいことで、後で、あるべき位置にお道具か無くて、その時に先ほどひと手抜けたことに気付いて、そこで先生にご説明頂いても、初心者は良く分からなくなってしまうのです。
先生のご指導に口を挟むことは、基本的にはしません。
私のミスに気付いても黙っていらっしゃる先輩もいらっしゃいました。
でも、Oさんは、私のことを思って、しかも、先生に失礼にならないように、綺麗な言葉使いでひとことおっしゃって下さいます。
お料理がお上手で、お宅にお邪魔してご馳走になったこともあります。
”ボラの良いのがあったので、からすみを作ったのよぉ。召し上がってみてぇ” などと、冷蔵庫から出されます。
からすみ?家で?作れるの????
驚いてしまいます。
もちろん、美味しかったです。
市販の物よりもしっとりで、塩辛くなかったです。
私がお茶名を頂いてすぐにお邪魔したときは、お昼ですのに、お酒をご用意下さって、ご主人様もご一緒に ”おめでとう。乾杯!” と、お祝いをして下さいました。
余談ですが、ご主人様は、音大の教授をなさっていて、Oさんのことを ”まあちゃん” と呼ばれます。
お着物も、お茶のお道具もたくさん頂戴しています。
さすがに、私も ”して頂くばかりで申し訳ありません。” と、恐縮しておりますと、
”いいのよぉ。そんな、気にしないでぇ。
でも、そんな風に思って下さるのなら、〇〇子さんは、御自分よりもお若い方に何か出来ることをして差し上げて” とおっしゃいました。
ああ、そうか!と思う反面、私のところで、ご恩を貯めてしまったら、きっとバチが当たるに違いないと感じました。
思えば、頂いたご恩は、Oさんだけではなく、お茶の先輩のKさん、Tさん、Eさん。
母の新橋の店のお客様にも可愛がって頂きました。
私は、生まれながらに心根の優しいというタイプではありません。
心の中には、つねにエンジェルちゃんと悪魔くんが言い争いをしています。
でも、Oさんのお言葉がいつも頭にあるので、優しくあらねばという戒めになっています。
近頃、気になっておりますのが、お若い方からも逆に優しくして頂いていることの方が多いこと。
あと、いつでも私を肯定して下さる仲居さんバイトのお仲間で、私よりもずっとお若い方が、私の良い所を言って下さったのですが、それが、<我を通しても嫌味の無いところ>というものだったのです。
あれ?優しいとかじゃないのですね。
そんな私でも好いて下さっているのは、本当にありがとうございます。
まだまだなのですね、わ・た・し
バチが当たらないように努力します。