母と私の着物ぐらし

着物の決まり事 日々のコーディネート 趣味の茶事 母との暮らし 仲居さんのバイト

仲居さん日記62

バイト先のお客様は、お優しい方が多いです。

先日、こちらが申し訳なく思ってしまうほど、気が付かれるお客様がお出で下さいました。

 

金婚式のお祝いのお席でした。

 

    

     

総勢10名様。

金婚式を迎えられるご両親様と、お子様のご夫婦2組。そして、それぞれのご夫婦に2人づつのお子様(お孫さん)です。

 

この会を仕切っていらっしゃるのは、ご長女の方です。

お飲み物を伺いに参りました時も

 

”では、生ビールの人ぉ~!”

 

そのお声に、手が上がります。

 

”1,2,3、4,5と、、、○○ちゃん、ごめんね。運転手させちゃって”

 

義理の妹さん、つまりはこの家のお嫁さんは、ご両親の送り迎えの車の運転を担当されているようです。

 

お子様方のお飲み物も確認して下さって、私に的確にご指示下さいます。

とても助かります。

 

 

個室まで、お料理は長手に載せて運びます。

大勢様ですと、何枚かになります。

 

私が、お料理の載った長手をお部屋に運んでいき、さて、置きましょうと思ったら、置くところがありません。

 

下げた器用の空の長手が置かれていました。

 

よく来て下さる配膳会の仲居さんがそこにいらしたので

 

”○○さ~ん、ピンチ!”

と、声をかけました。

 

甘え上手な私と、よく気が付く配膳さん。

そこはすぐに察して下さいました。

 

ところが、その一瞬早く、お客様が

 

”あっ、はい” 

 

とおっしゃって、お席を立たれて、空の長手をどけて下さったのです。

なんと素早い動き!

 

素早過ぎて、ご遠慮する暇もありませんでした。

 

ほほあん

”お客様に申し訳ない事でございます”

 

お客様

”いいえ、とんでもないで~す”

 

ほほあん

”ありがとうございます。助かりました”

 

 

金婚式のお祝いということで、お店の方からサプライズで鯛めしをご用意させて頂きました。

皆さんに一膳づつは、こちらでお付けするのですが、お替りはお任せ致します。

 

ほほあん

”まだ、たくさん残ってございます。どうぞお替りなさってくださいませ。

恐れ入りますが、お給仕はお客様にお願い致します”

 

お客様

”はい。解かりました。みんなぁ~お替わりは、私までどうぞぉ~”

 

 

デザートまでお出しして、本日のご来店のお礼を申し上げますと、なんと、そのお客様は、御自分もお立ちになって

 

”色々お世話になりました。ありがとうございました”

とおっしゃって下さいました。

 

丁寧にお礼をおっしゃる方はおいでになりますが、わざわざお席を立ってご挨拶を頂いたのは初めてです。

 

礼儀正しいとか、きちんとなさっているとか、そういうレベルのことでは無くて、自然なお振る舞いで、人として素敵というか、尊敬できる方でした。

 

全てのことに意味があると思っております。

お客様と接客という立場ではございますが、こういう方と巡り会えたことに感謝致します。

見習いたいと思います。