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仲居さん日記48

   ~マンボー延長のある日

 

新規感染者がなかなか減っていかないのと、マンボー延長のため、私のバイト先の平日は、ほぼご予約0という厳しい状態です。

 

出勤すると、先ず予約表のチェックをするのですが、その日も白紙でした。

 

気を取り直して、開店の準備をしていると、電話が鳴りました。

電話対応は黒服さんがしてくれます。

聞き耳を立てます。

 

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また、キャンセルでしょうか。

 

”1時”という声が聞こえました。

今日のご予約だと良いのですが、、、

 

さすがに、週末はご予約を頂けます。週末に出る仲居さんだけが忙しく働いていて、いつも申し訳ないと思っているのです。

 

”そのお料理は当日予約は承っておりません。〇〇御膳ではいかがでしょうか”

 

おっ、今日のご予約のようです。やったぁ。

 

黒服さんが電話を置かれたので、近づいて、書かれたメモを覗きます。

 

”池田様(仮の名)2名様ですね。ありがたいですね”

 と、メモを取りながら、

”池田様に♡マークつけちゃお”

 

これに、なんと!無口な黒服さんが反応したので、ビックリ!

 

”はい!池田様に♡マークです!” とおっしゃいました!

 

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バイトの私とは違い、色々と責任を感じているのでしょう。

ご予約がよほど嬉しかったのですね。

あ~ビックリしたぁ。

 

その後も、黒服さんは、基本、当日予約は受けないことになっている<2段会席重>なのですが、板場に対応できるかを確認。

 

今の板長は、お客様第一とのお考えで、労力を惜しまない方です。

”前日までに予約してくれなきゃ”とかおっしゃいません。

”大丈夫だよ”と。

 

板長からOKを頂いたので、黒服さんは池田様に折り返しお電話で、ご希望通り<2段会席重>をお受けできることをお伝えしました。

 

なんか、皆さん、いい感じじゃないですか。

お客様にご来店頂くことがどんなにありがたいことか、身に染みていますからね。

さて、私も失礼のない様に頑張らなければいけません。

 

0も覚悟の日でしたが、ご予約の池田様の他に、2名様と、お一人様、お若いご夫婦がお子様とご一緒にご来店下さいました。

 

カップルは、お邪魔をしないようにするのが一番ですので、最小限のお声かけでお料理をお持ちしました。

お帰りに、お支払いが別々だったのには驚きました。

ビジネスランチだったようです。

思い込みの強すぎる私です。

 

 

お一人様の奥様は、お茶で良いとのことでした。

 

ところが、ここで、お席の離れた池田様から、ハッキリ聞こえるお声で

”うわぁ~このビール美味しい!泡が!クリーミィ―!”

 

すると、奥様が

”すみません。やっぱり私にも生ビールお願いします”

 

池田様!ありがとうございます。♡♡♡♡♡

 

この奥様のお口にも合ったようで、生ビールをお替りして下さいました。

あっ、バイト先の生ビールはジョッキではありませんよ。

下に向かってグゥ~と細くなっている残念な、いえ、上品なグラスです。

 

この日は、風邪が強くて寒かっただけに、眺望は素晴らしく、筑波山の裾の方まで綺麗に見えていました。

 

”これだけ綺麗に見えることは滅多にございません。良い日にご来店頂きました”

”そうなんですね。本当に見晴らしが良いですね”

 

 

2時近くに若いご夫婦がご来店です。

パパさんがお嬢様をおんぶされています。

可愛いぃ~~~

お嬢様のお顔を除いて ”いらっしゃいませ”と申し上げました。

 

”お子様用の椅子をお持ち致しましょうか”

”はい。お願いします”

 

椅子を取りに行ったら、いち早く黒服さんが準備していました。

そして、アルコール消毒しています。

 

そうですね。コロナ対策!流石です。

でも、時間取っちゃっているので

 

”ただいま、消毒させて頂いております”

”ありがとうございます”

 

なんか、私だけが良い役取っちゃってますね。

だいたい、私、こういう調子のいいところがあります。すみません。

 

ご夫婦が、メニューをご覧になっていると、お一人様の奥様がお席をお立ちになりましたので、慌てて、コートを取りに参りましたら、

 

”いいのよ。自分でするわ。あちら、決まったみたいよ。行ってさしあげて”

 

じ~~~ん

 

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親戚のおばさんみたいにお優しい。

でも、バイト先には時々こういう優しいお客様がお出で下さいます。

 

私もこんな風になりたいなと思える方に出会うチャンスが多いのも、このお仕事の魅力です。

 

さて、若いご夫婦とお嬢様です。

コロナ禍で、お祖父様、お祖母様ともなかなかお会いする機会もなく、お嬢様は、初めての場所と、ご両親様以外の人間(私)に戸惑っているご様子です。

私から、目を離されません。

マスクで半分隠れた顔ではありますが、思いっきりの笑顔で<私はあなたに危害を加える者ではありません>をアピールしますが、笑って下さいません。

 

口に出して、みました ”大丈夫ですよぉ~”

 

笑いません。澄んだ瞳で私を見つめています。

 

まだ、世の中の汚い物を何も見ていない目。

そんな清らかな瞳で見つめられて、ちょっとドキドキしてしまいます。

 

お嬢様には離乳食をお持ちになっていらしたので、パパさんがスプーンをお口に持って行くのですが、お嬢様は私を見つめていらっしゃるので、スプーンが目に入りません。

 

そこで、私が ”あ~~~ん”

お嬢様のお口が開いたところに、パパさんがスプーンを。

ナイス!連係プレイ!

 

天使ですね。とても癒されます。

 

ご両親様がゆっくりとお食事をなさるお手伝いもしたいのですが、悲しいかなコロナの世の中です。

お嬢様に触れるのはご遠慮するのがよろしいでしょう。

 

その後は、お嬢様の関心がお食事の方へ向かうように、隠れておりました。

 

母と二人だけの生活では味わえない世界がバイト先にはあります。

もう、しばらく使って頂けるとありがたいです。