~ご結婚40周年のお祝いのお席
予約表に結婚40周年のお祝いと書かれていました。
25年が銀婚式。50年が金婚式。
40年って???
後で、スマホで調べようと思ったまま、朝の支度に追われてしまいました。
主役のご両親がいらっしゃる前に、ご長男ご夫婦がいらして、お部屋の準備をなさっていらっしゃいます。
4と0の金色の風船を飾られ、花束贈呈もあるようです。
”ルビー婚式だから、赤いダリアにしたの。可愛い花束になったよね”
楽しそうなお声で、40年はルビー婚式と呼ばれることを知りました。
先ほど、私と同じく何婚式???だった板長にも教えてあげましよう。
”板長!ルビー婚式だそうです!”
”えっ?なに?ぶり?”
すごい!さすが料理人!頭の中は食材のことで一杯なんですね。
でも、それって、ミック・ジャガーが肉じゃがに聞こえちゃうのに似ています。
“鰤じゃないですよ!宝石のルビーです!”
お料理は、乾杯!が済んでから出させて頂きますので、廊下でお部屋を伺っておりました。
先ずは、初孫さんの2歳の可愛らしいお嬢様から花束贈呈です。
楽しいお声が響きます。
なかなかお席に座って頂けません。
やっと、お席に着かれて、乾杯なさるかと思いきや、主役のお父様から ”あれから40年、、、”というご挨拶があって、またまた笑い声に包まれます。
そして
”乾杯!”
さあ、お料理をお出ししましょう。
贅沢なコースをご予約して頂いております。
お子様には子ども弁当のご用意があります。
1段のものと、2段のもの。
2才のお孫さんには、1段で十分だと思います。
卵のアレルギーということでしたので、板長がいつもとは全く違う献立を考えていました。
大人の皆さまが豪華なコースをお召し上がりなので、板長としてはサービスのお気持ちもあったと思いますが、通常の子ども弁当よりもかなり立派なものになっていました。
子ども弁当をお持ちして、若いお母様に
”卵は使っておりませんのでご安心くださいませ”と申し上げました。
お嬢様のお口にも合ったご様子で、ご機嫌よく召し上って頂けて、本当に良かったです。アレルギーがあるって、食べ物に制限があって可愛そうですもの。
楽しくお食事が進み、デザートです。
子ども弁当には、通常ですと、バニラのアイスクリームが付きます。
アイスクリームには卵が入っていますので、お嬢様にも、大人の皆さまのコースのデザートと同じフルーツが付きました。
メロン、苺、キュウイです。
ここで、私、心配になりました。
かなりのサービスをさせて頂いていることを、お客様は御存じないはずです。
それに、これが、当店の子ども弁当だと思われますよね。
いいのかな?
板長の心づくしは伝えたいし、、、
ここで、私、痛恨の小賢しい行いをしてしまいました。
私の予想では
”通常ですと、子ども弁当には、アイスクリームが付くのですが、卵のアレルギーと伺いましたので、フルーツの盛り合わせに変えさせて頂きました。
”あら、どうもありがとう。いろいろ気を使って頂いて。板長さんによろしくお伝えくださいね”
みたいになる。と。
現実は
”通常ですと、子ども弁当にはアイスクリームが付くのですが”
”あっ、だったら、アイス下さい”
ーーーえっ?いえいえ、フルーツお出ししたじゃないですか、やだ、困った
”アイスクリームには卵が入っていますので、フルーツに変えさせて頂きましたが、よろしかったでしょうか”
ーーーなんか、お詫びしている感じになっちゃっいました。
だいたい、お客様にお礼を言わせようとした私が、非常にいやらしかったですね。
とても反省しています。
廊下に下がったあとで、お部屋の中から”フルーツの方で良かったよね”とのお声が聞こえたのが幸いです。