叔母からお餅が届きました。
お正月用ではありません。
<とおかんや>でお餅をついたからと。
母がお餅が大好きなので、毎年この時期に欠かさず送ってくれます。
♪ とおかんや とおかんや 十(とお)寝て起きるとえびす講 ♪
母が歌う謎の歌です。
母の幼い頃の記憶です。
まず、必要なのが、まるで野球のバットのような形に、藁を棒状に束ねて、穂先を三つ編みにして、持てるように輪にしたもの。
これは大人が用意してくれたようです。
その藁をそれぞれ子ども達が持って、ご近所の家を次々と、屋敷の周囲の地面をその藁で叩きつけるようにしながら回ったのだそうです。
各家々では、子ども達のためにお菓子を用意して待ってくれていたといいます。
お菓子をもらえるなんて、まるでハロウィンのようですね。
母にとっては楽しい記憶のようです。
とおかんやには、必ずお餅をついて、大根や里芋をお供えしたそうです。
そのお供えの仕方ですが、茶の間を開け放して、お月見のときのようだったと言います。
調べてみました。
旧暦10月10日(2020年は11月24日)に行われる稲刈りを終えた後の祝いの行事で、子ども達を中心にした収穫祭だそうです。
稲刈りを終えると、田の神様が山へ帰って行きます。
田の神様に感謝するとともに、お送りする行事でもあります。
主に関東で行われる行事で、関西では<亥の子><玄猪(げんちょ)><亥の子の祝い>などと呼ばれる行事がそれに当たります。
亥の月の亥の日に行われるのだそうです。
亥の月の亥の日といえば、お茶を習った人なら、お馴染みの炉開きの日です。
亥は、摩利支天(まりしてん 仏教の守護神・炎の神)の使いなので、火を免れるといわれています。
炉開きの日は<亥の子餅>を頂きます。
美しい主菓子がたくさんある中で、<亥の子餅>はいのししを模しているので、見た目はちょっとなのですが、やはりこの時期にお茶事をするとなると、使いたいお菓子です。
叔母からお餅が届いたことから、ここに繋がってくるなんて、とても面白いです。
母が言っていたバットのような藁の束は<藁鉄砲>と呼ばれるようです。
藁鉄砲で地面を叩くことで、農作物に害を及ぼす、モグラやネズミを追い払う意味があります。
母も幼いながらも、その意味を知って、頑張って叩いていたと言います。
母の謎の歌に出てくる<えびす講>ですが、こちらは商売繁盛を願う行事です。
お月見のようなお供えの<とうかんや>とは違い、床の間に尾頭付きのお膳がお供えされ、その日はご馳走があったと母は言います。
えびす講は旧暦の10月20日に行われるので、<とおかんや>の10日後ということになります。
謎の歌の ♪ 十(とお)寝ておきるとえびす講 ♪ は確かに当たっています。
これも、関東の<二十日(はつか)えびす>に対して、 関西では、10月10日に行われるのでの<十日(とおか)えびす>との違いがあります。