母と私の着物ぐらし

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ゆかり

只今は、私のバイト先の会席のご飯は、紫蘇ご飯をお出ししています。

梅干しに入っている紫蘇のような、赤しその塩漬けを乾かして砕いたものを白いご飯にサラサラっとかけたものです。

香りと塩けと、お酒の後の〆のご飯にはぴったりだと思います。

 

お品書きにも ”紫蘇ごはん” と書かれていて、私としては、どうして ”ゆかり” としないのか、せっかく情緒のある名前があるのになぁと残念に思っていました。

 

”ゆかり” を検索してみましたら、”ゆかり” は三島食品という会社の登録商標であることがわかりました。

知らなかったです。

お醤油を ”むらさき” と呼ぶのと同じく少し上品な呼び名だとばかり思っていました。

 

つまりは、三島食品さん以外の紫蘇のふりかけは ”ゆかり” ではないのです。

 

でも、三島食品さんのシェアは90%という驚異の数字なので、ほとんどが ”ゆかり” には違いないのですが、、、

 

 

もうひとつ思い違いをしてたことがありました。

 

~ 紫蘇のふりかけは、紫色だから ”ゆかり” と呼ばれる ~ と、ここまでは良いのですが、それは、紫のゆかりの物語である源氏物語から来ていると思い込んでおりました。

 

三島食品さんのホームページでは、その名前の由来が書かれています。

 

紫の ひともとゆゑに 武蔵野の 草はみながら あわれとぞ見る

     古今和歌集  読み人知らず

 

その意味は

むらさき草が一本咲いているという(縁)だけで、武蔵野の草花が皆愛おしく(身近に)感じてしまう

 

この歌ゆえに平安時代から、紫はゆかりの色というのが定着したのだそうです。

 

赤しその名前を考えた時、商品の色が紫色であること、皆様とのご縁を大切にしたいという思いから ”ゆかり” と命名しました。

とのことです。

 

ちなみに、この短歌には更に深い意味があって、この一本の紫草は恋人を例えたもので、その女性に縁のあるものは何でも愛おしいと詠んだものなのだそうです。

 

 

古今和歌集が編集されたのが905年。

源氏物語の成立は1005年頃と言われています。

紫はゆかりの色という常識の中で、源氏物語は執筆されたのですね。

だから、顔も知らぬ亡き母にそっくりといわれる母にゆかりのその人は、紫色の美しい花の名である藤壺でなければならなかったのでしょう。

                                               藤の花のイラスト

 

藤壺というのは、平安御所後宮の七殿五舎の一つ飛香舎の別命であり、飛香舎を賜った皇妃の呼称ともなります。

 

源氏の最愛の人は藤壺でありますが、藤壺は父帝の愛妃でありやがて中宮になります。

叶わぬ恋です。

その恋しさが藤壺ゆかりの人である藤壺の姪の紫の上に向かうのです。

それで、紫の上を生涯ひとすじに愛したのならば、まあ、それはそれという感じですが、源氏は40歳を迎えるころ、やはり藤壺の姪に当る女三宮を正妻に迎えるのです。

紫の上が傷付くことをわかりながらも、藤壺の姪という別の女性に興味を抱いてしまうのです。

しかも、女三宮天皇の皇女という高い身分で、その上若い。

 

紫の上が出家したくなるのも当然です。

それもまた源氏は許さないわけですが。

もしも私が紫の上だったら、、、と、想像します。

んんんんんーーーー我ながら、文章にするとあまりにも怖いので止めておきます。