着物や帯によく使われる柄の名前や背景を知ることで、着物ぐらしがいっそう楽しくなります。
青海波
同心の半円を重ねたこの柄は、まぁるくおっとりしたデザインもさることながら、青い海の波と書く<青海波>という名前も爽やかです。
いかにも海に囲まれた日本らしい柄 という印象ですが、ササン朝ペルシャで生まれたものだそうです。
それが、シルクロードを通じて中国を経由して日本に伝えられたのは飛鳥時代。
なかなかにロマンを感じます。
埴輪の着物の模様にもみられるとのことです。
私には波としか見えないのですが、意外にも、水を意味する文様として描かれるようになったのは鎌倉時代の古瀬戸からです。
江戸時代には、勘七という漆工が巧みに描いて流行しました。
現代も着物や帯の柄というだけではなく、棗や香合といった塗り物の他、抹茶茶碗や、日用品のお皿やコーヒーカップなどにも広く<青海波>が見られます。
<青海波>の名前の由来ですが、雅楽の演目<青海波>の装束に使われている模様で、そのことにより、この模様のことを<青海波>と呼ぶようになったということです。
この雅楽<青海波>ですが、源氏物語の<紅葉賀(もみじが)>の巻に、光源氏が頭中将と二人で帝の前で舞うシーンが描かれています。
源氏19歳。まさに光り輝く美青年。
ここで、いつも比べられてというか、比べ物ににもならないのですが、当人は源氏をライバル視している頭中将の扱いが可哀想なのです。
頭中将も、一般的に見れば、風采のいい立派な男子ではあるが、源氏と並ぶと、咲き誇る桜の木の隣の深山の木に過ぎないというのです。
宿敵である弘徽殿の女御も、神に愛されてさらわれそうで気味が悪い と、意地悪ながらも美しさを認めています。
<青海波>は縁起の良い吉祥文様です。
無限に広がる穏やかな波に、平安な暮らしが未来永劫と続きますようにという願いがこめられています。
末広がりの扇型にも見え、重ねることによって更に縁起が良い模様となっています。
佐賀錦の帯です。
松、鶴、亀甲とともに<青海波>も吉祥文様として描かれています。