盛夏のお茶事には、涼を感じて頂くことが一番です。
数年前に、水をテーマにお茶事をするために求めたお軸です。
私が良く利用させて頂いたお茶道具屋さんは、2階にお軸が揃えてありました。
1階は、所狭しとお道具が並べられているのですが、草履を脱いで、2階に上がらせて頂くと、お道具を守るために、お部屋はほの暗くなっています。
そこに何本か下がっていたお軸の一本がこれでした。
瀧 という字の迫力もあって、このお軸だけが一歩前に出ているように感じました。
瀧直下三千丈
巨大な滝が、勢い良く真下に流れ落ちる距離は三千丈もあるという意味です。
李白の 望廬山瀑布 <廬山の瀑布を望む>という詩が元になっています。
日照香炉生紫煙
遥看瀑布挂前川
飛流直下三千尺
疑是銀河落九天
日の光が香炉峰を照らし、紫色の靄(もや)が立ち込めている。
遥か遠くには、滝が前を流れる川に流れ落ちているのが見える。
飛ぶように早い滝の流れは、真っすぐ下に三千尺も落ちている。
まるで、天空の頂上から天の川がそのまま落ちて来ているかのようだ。
壮大な詩ですね。
ところで、李白の詩では三千尺が、私のお軸では三千丈と、さらに10倍の長さになっています。
今回、調べてみましたら、三千尺と書かれたお軸もあるようです。
どうせなら、どどんと三千丈!の方が私は好きです。
そう言えば、<白髪三千丈> などというのも、漢文で習った記憶が、、、
<怒髪天を衝く> も、すごい表現ですね。
瀧直下三千丈 は、自然の雄大さを感じ、瀧で涼を味わえば良いとのことです。
天の川 ということで、七夕の趣向にも相応しいですね。
瀧の流れは、目には見えませんが、水面下にも勢いよく続いています。
岩を砕き、石を飛ばし、窪を作ります。
その窪には竜が潜み、やがては、その滝は天まで昇る。
そんな姿まで見えてくるような気がします。
物語が広がるお道具って素敵です。