先日、茶杓はお軸に次ぐ大切なお道具で、茶杓には銘があり、その銘は茶事の根幹となることを書かせて頂きました。
その、茶杓の銘ですが、こちらの希望の銘で作って頂くことが出来ます。
いつかは、それをお願いしたいと思っていました。
でも、お道具屋さんには禅語から取った興味深い銘や、季節感のある美しい銘の茶杓が並んでいます。
こちらからお願いするには、そこに無い銘でなければなりません。
具体的に浮かばぬままに過ごしておりました。
お茶は私にとって特別なものです。
飽きっぽい私には珍しく、一途な気持ちで続けてきました。
そんな自分にご褒美として求める茶杓の銘です。
何が良いでしょう。
背伸びをした難しい言葉ではなく、誰もが知っている言葉で私に似合うもの、、、
わざわざお願いするのですから、あまり他で見かけないもの、、、
ふと、ひらがな でお願いしようと思い付きました。
これまで伺ったお茶会などで、ひらがなの銘のお茶杓は拝見したことがありません。
柔らかい印象になるのではないでしょうか。
一途な気持ちをそのままに ” いちず ” とも考えましたが、いちずな想いとか、いちずな心とかの表現にしないと解かりずらいですし、字の並びがあまりピンときません。
そして、私がお願いしたのが
ひ と す じ です。
京都の大徳寺の三玄院のご住職 長谷川大真和尚がお受け下さいました。
三玄院は、宗旦が修行をしたところです。
お茶のお稽古をする者にとっては特別です。
竹の筒に入っています。
茶杓の櫂先(かいさき)が兜巾(ときん)に
なっていることが
この茶杓の見どころです。
兜巾というのは、山伏が被る小さな布製のずきんのことです。
先の尖った形が似ているのでその名があります。
この形にして下さったのは、その先に向かってひとすじに精進しなさいというお教えとも感じています。
この茶杓は少し短めです。
そこもまた、可愛らしく思います。
茶杓の長さは決まっているものではありません。
かつてはお茶碗に合わせて作ったとも聞きます。
コロナ下では茶事の開催は不可能です。
とても残念な思いで過ごしております。
一日も早く安心な日々が戻ってくることを願うばかりです。