ご家族のお食事会です。
床の間を背にして、お若い男性がお二人で座られ、一番奥にご年配の男性(たぶんお祖父様)床の間に向かって、ご夫婦(たぶんご両親)が座られています。
本来であれば、床の間側が上座で、そこにお祖父様が座っていて下さると分かりやすいのですが、
さて、配膳の順番は如何しましょうか、、、
配膳の順番は、大切です。
接待のような場合は、はっきりとお席が決まってきます。
なんならお指図もございますので、こちらも迷いません。
ご家族のお集まりのような場合は、先ずは、水入らずのお楽しみに、極力お邪魔にならないことを心がけます。
順番よりも、効率よくお配りして、なるべく早く退出するのが良いと思っています。
とはいえ、最初が何方かは重要です。
と、ここで耳寄りな情報が入りました!
お祖父様が、弟君に
”成人、おめでとう。○○君も、もう大人の仲間入りだなぁ”
とおっしゃいました。
ご予約の時には伺っておりませんでしたが、弟君の二十歳のお誕生日のお祝いのお食事会のようです。
ほほあん
”今日の主役は、こちらのお若い方でいらっしゃいますね”
お祖父様
”そうなんだ。二十歳になったんだよ”
ほほあん
”おめでとうございます。ではこちらから配膳させて頂きます”
と、ここで、お父様から思わぬ発言
”いや、こちらから(お祖父様を指す)”
どうやら、お祖父様は、お母様のお父様のようです。
義理の息子としては、気を使いますね。
でも、ここでお祖父様の鶴の一声
”いやぁ、孫から頼むよ”
解決です!
この、お祖父様、八十歳前後でしょうか。
華やかな色合いのワイシャツが良くお似合いで、なかなかにダンディな方です。
家族写真を撮られた時のお話で
”あの写真屋、俺の事、おじいさん!おじいさん!って何回も呼んでサ”
どうやら、おじいさん!とお孫さん以外から呼ばれることに抵抗があるご様子です。
お母様
”じゃ、何て呼ぶのよ。おじいさん以外に”
お祖父様
”そりゃそうだけど、あいつのじいちゃんじゃないんだしさぁ”
実の親子さんの会話は、遠慮がないのが面白いですね。
お食事中に、お写真が回って、みなさんがご覧になっていらっしゃいます。
成人したお孫さんの幼い時の写真をごらんになって
可愛かったねぇ~
立派になったねぇ~
と、しみじみと喜び合う
のかと、思いましたら
お祖父様と、お祖母様のお若い時のお写真をご披露しているようです。
お孫さん方
”おじいちゃん、かっこいいじゃん。おばあちゃんもイケイケな感じで可愛いよ”
”おばあちゃん、ミニスカートだもんなぁ!”
”ふたり、ラブラブじゃん”
お祖父様
”なっ、いいだろ”
この場にお祖母様がいらっしゃらないのが、少し気になりましたが、
お祖父様は、とても楽しそうに娘さんご夫婦と、お孫さんとのお食事のひと時を楽しんでおられました。
歳を重ねるごとに、自身の価値観が作られていきます。
そこから外れたものを受け入れられなくなります。
苛立ちさえ覚えます。
機嫌よく歳をとるのはけっこう大変なことだと、私も実感しているこの頃です。
このお祖父様は、そこから抜けたところにいらっしゃるようにお見受けいたしました。
お帰りには、ブレザーを羽織られ、颯爽とかぶった中折れ帽がとてもよくお似合いでした。