~お孫さんの十三参りにお祖父様の頑張り
十三参りって、実を言うと、我が故郷の群馬の山間部ではあまり馴染みがありません。
嵐山の法輪寺の虚空蔵様へのお参りが有名で、13歳まで無事に育ったことをお祝いし、さらにこの先を生きるための知恵を授かりに参拝するのだそうです。
ちなみに、虚空蔵菩薩は、13番目に誕生した知恵と福徳を司る菩薩だそうです。
女の子の行事かと思っていましたら、男女共にあるそうです。
バイト先では、七五三のお祝いのお席は毎年多く承りますが、十三参りは、私の記憶では今回が2回目でした。
前回は、お祖母様の振袖をお召のお嬢様でした。
古い時代の物は、質が良いなぁ~と感心しながら見とれたことを覚えています。
今回は、普通の袖丈の訪問着をお召のお嬢様でした。
真新しい訪問着!
色紙に、花々が描かれているという古典的な柄です。
地色も、ベージュでもクリームでもない、シャーベットオレンジよりも薄い色合いで、なんとも上品です。
お嬢様には、少し大人っぽい装いです。
お母様がお嫁入の時にお持ちになって、一度も手を通していない着物なのかもしれません。
お嬢様の後ろを配膳のために通らせて頂きましたら、縫い紋が入っています。
家紋ではなく、伊達紋でした。
ほほあん
”紋を入れられたのですね。訪問着が更に格が上がって、素晴らしいですね”
と、お祖父様が手をあげられて
”はい。おじいちゃんが頑張って作ってあげました”
十三参りのために、お祖父様からのプレゼントのお着物だそうです。
お母様のお下がりだと思ってしまってごめんなさい。
ほほあん
”お嬢様、十三参りをして頂ける方はさほど多くはいらっしゃいません。お嬢様はお幸せでございます”
お嬢様の着付けは、衿元をきゅっと重ねて、後ろ衿もあまり抜かないで、お若いお嬢様に相応しい、それでいて、自然な感じでゆったりと、着慣れているかのようなご様子です。
お祖母様がお着物をお召しでしたので
ほほあん
”着付けは、お祖母様がなさったんですか?綺麗に着ていらっしゃいますね”
と、ここで再びお祖父様が手をあげて
”いいえ、おじいちゃんが着付けました”
ほほあん
”ええっーお祖父様が!
お祖父様、いったい何者でいらっしゃいますかっ!
人文科学の教授のようにお見受けいたしますが”
とっさに口に出ました。
お祖父様の印象は、教育者というより研究者。
研究者と言っても、白衣で試験管を振っているという感じではなく、うず高く積まれている書物に囲まれているような。
ん?否定しない?
当たらずとも遠からずってこと?
ほほあん
”お孫さん可愛さに、着付けを勉強なさったとか、、、”
満面の笑顔
ん?そうなの?当たっちゃったの!?
まあ、とにかくお幸せなお席の担当は、こちらも嬉しくなってしまいます。
お祝いのお席のお造りは、鶴のお皿に盛らせて頂きます。
お嬢様にお出しする時に、そのことを申し上げますと、
お母様が
“鶴は何年?” と、お嬢様にお尋ねになります。
お嬢様
”えっ!何が?意味がわかんない”
ほほあん
”お母様、長く生きておりますと、繰り返し耳にすることも多ございますが、その質問は、お嬢様には唐突です!”
お母様
”鶴は千年、亀は万年っていうの、知らない?”
お嬢様
”何それ。千羽鶴しか知らないよ”
お母様
”鶴は千年も亀は万年も生きるって言われて、縁起がいいのよ。だから、鶴のお皿に盛って下さったのよ”
このお嬢様には、少し歳の離れた妹さんがいらっしゃいます。
天真爛漫。可愛いお嬢様です。
小さいお嬢様にはアイスクリーム、他の方々には、苺と小さな道明寺がデザートとして付きました。
小さいお嬢様
”その苺!全部食べる!” (キッパリ)
大きいお嬢様
”苺、食べたかったのになぁ”
小さいお嬢様
”お姉ちゃんは食べていいよ。他のを食べる!”
大きいお嬢様
”そう?いい?”
ご姉妹仲がよろしいのが微笑ましいです。
妹さんを可愛がっていらっしゃいますね。
ここのお席のお隣はお部屋は、新一年生になられる坊ちゃんを先頭に、御兄弟と従兄弟さん4人が、全て男の子という子どもさん達を含むご親戚のお集りでした。
十三参りのご家族がお帰りになるときに、お隣のお客様が
”あら、綺麗なお姉さんが通るわよ”
新一年生の坊ちゃんは元気に
”こんにちわぁ”
お嬢様方も
”こんにちわぁ”
奥様方どうしも
”こんにちわぁ”
何か、いいでしょ。この光景。
あ~
今日も楽しい仲居さんのお仕事でした。