~初孫ちゃんと初お目見え
バイト先には、一部屋だけ畳のお部屋があります。
ご年配のお客様のために、お部屋を椅子席に変えて行く中で、小さなお客様のために残した和室です。
ハイハイが出来ますし、大人たちの背を伝って歩くことも出来ます。
大人4名様と、お子様おひとりのご予約です。
お子様のお食事は不要とのこと。まだお小さいのでしょう。
まだ開店前ですが、お子様の声が聞こえます。
和室のご予約のお客様のようです。
開店時間の前ですが、お部屋の準備は整っています。
ご予約がいっぱいなので、今のうちに、ご案内させて頂いた方が、こちらも都合がいいので、お声をかけてみました。
”〇〇様でいらっしゃいますか?少しお早目ではありますが、お部屋の準備は出来ておりますので、よろしければご案内いたしますが、、、”
あれ?ベビーカーにお子様がいらっしゃいません。
あっ!パパさんとご一緒でした。
ワンちゃんのお散歩の時のリード付きのハーネスのようなものを付けられてトコトコと歩いています。
パパとお嬢様の違いはありますが、こんな感じです。
可愛い♡
ご主人のご両親がまだお見えでないということで、お店に入らずにお待ちになるということです。
しばらくすると、黒服さんが
”和室のお客様、入って頂いていいですか?”
”さっき、お声をかけました。ご両親をお待ちになるそうです”
また、しばらくすると、今度は板長が
”赤ちゃん連れのお客様が、もうお待ちだよ”
だからぁ(←心の声)
”さっき、お声をかけました。ご両親をお待ちになるそうです”
もう、みんな、たくさんのご予約をなんとかスムーズにこなそうと、前のめりです。
もしくは、私に対して心配性?
ホールもお部屋もご予約でいっぱいです。
私はお部屋3つ(本来4部屋、1部屋はつなげて広く使っています)全てを担当しまければなりません。
時間差が頼りです。
でも、もっと頼りになるのは仲居さんのお仲間です。
御自分もホールのほうで大変だと思うのに、手伝うねと言ってくれます。
と、ここで、赤ちゃん連れのお客様よりも30分遅いはずの大人4名様のお客様がご到着です。
ご案内して、お飲み物をお伺いしている間に、先ほどのお子様連れのお客様のご案内からお飲み物までを、早速、先輩仲居さんが引き受けて下さいました。
ありがとうございます。
後は、何とか、時間差を付けながら配膳します。
普通、私共仲居さんが、床の間の前を通ることは致しませんが、お子様がちょこちょこと可愛らしく動かれる場合は、そうも言っていられません。
私は ”お高い所を通らせて頂きます”と、お声をかけております。
私の行儀は店の品位にかかわって参りますので、弁解をしておきませんと。
”もう、どこでも通って下さい。お邪魔ですみません” と、言って頂きました。
ずっとご機嫌だったお嬢様が、ぐずりはじめました。
若いお母様が気になさいます。
”すみません。うるさくて。眠いのかな?眠いなら寝てくれればいいのにぃ”
飛行機の中で、赤ちゃんが泣いているのを ”うるさい!”と怒鳴った男性に対して、第三者のご婦人が ”赤ちゃんは泣くのが仕事です!”と、ビシッとおっしゃって、若いお母様を助けて差し上げたというお話を聞いたことがあります。
とても素敵なお振る舞いですね。カッコイイです。
でも、憧れはしますが、私が言うには貫禄不足です。
でも、今、気を使っていらっしゃるこの若いお母様に、私も何か言って差し上げたい、、、
ええと、、、
”お嬢様は、お小さくていらしても、私は簡単な女じゃないのよ。と主張されておいでです”
ん?これで、良かった?
若いお父様が ”そうかぁ。そうだよね” とおっしゃって、皆さんが笑って下さったので良しとしましょう。
その後、何度かお部屋に伺うと
お祖母様が ”パパが好きなのねぇ” と何度かおっしゃっておいででした。
なぜ、それを淋し気におっしゃるのか不思議でした。
お祖母様が、両手を広げてお孫さん迎える体制をとられたので
”まあ、良いこと!おばあちゃんに抱っこしてもらうのぉ”
と、私の前にたたずんでいるお子様にお声をかけました。
お孫さんも両手を広げて、お祖母様の腕の中
これって、ふつうの出来事ですよね。
ところが、若いお父様とお母様が、お二人で、”写真!写真!”とおっしゃって、一眼レフとスマホで激写なさいました。
この慌てたご様子にちょっと、ビックリ致しました。
お祖母様がおっしゃるには
”初孫なんです。早く会いたかったのですが、コロナで、、、岡山から東京に出てくるのが良い事かどうか考えてしまって、、、今、コロナが落ち着いているので、今だ!と思って会いに来たんです。もう、可愛くて、、、(泣きそうです)でも、なかなか抱っこさせてもらえなくて、、、今、初めて私の所に来てくれました”
お祖母様が抱っこしようとすると、嫌がってパパの元へ逃げてしまったそうです。
だから、”パパが好きなのね”が、なんとなくお淋しそうだったのですね。
コロナで、どこへもお出かけにならない、お訪ねになる方もいない、そんな環境の中では、お子様の身近にいらっしゃるのはお父様とお母様お2人だけです。
お祖母様とはいえ、すぐには甘えられないのは当然なのかもしれません。
コロナの禍は、いたるところにありますね。
お帰りには、お嬢様とお祖母様が手をつないで行かれました。
私にはバイバイと手を振って下さって、ハイタッチ。
お隣のお部屋のお客様にもバイバイをなさって、ご機嫌でした。
追記
話題に出なかったお祖父様ですが、こちらはすんなり抱っこに成功!
だって、笑っちゃうほどパパさんにそっくりなんです。