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仲居さん日記45

   ~元気で可愛い2歳のお嬢様

 

バイト先は、立派なビルの中の高層階で、眺望も素晴らしいです。

でも、決して気取った店ではありません。

立地が下町ですもの。ご家族様や、お友達どうし、町内会のお集りなどで、お気軽に使って頂いております。

 

還暦や古希のお祝いはもちろん、お食い初めや、七五三のお祝いのご予約をありがたくお受けしております。

お子様歓迎のお店です。

       食事をする子供たちのイラスト

 

ところが、先日、少し困ったことがありました。

 

一番端のテーブルは、小さなお嬢様とそのご両親様、そして、お祖母様の4名様。

お父様と、お祖母様が、そろってお誕生日とのことです。

お祝いのプレートも承っておりました。

お嬢様は可愛い盛りです。ご機嫌でおしゃべりなさっています。

 

そのお隣のテーブルは、30代?くらいのお嬢様と、そのお母様。

何度かお見え下さっていると黒服さんから情報を頂いております。

 

その日は、お陰様で満席でした。

ところが仲居さんは2人です。他のお二人の方はご都合がつかなかったそうです。

コロナ禍での厳しい営業状況を見ておりますと、例えバイトの身でも、満席は心からありがたいと思います。

忙しくても頑張ります!

 

でも、間に合いません。

 

今の板長は、仲居さんが手一杯なのを見かねて、お部屋の前までお料理を運んで下さったりもなさいます。

お客様にお出しするまでをして下さることもあります。

 

お客様は、一瞬、”え?誰?このおじさん” と驚かれたご様子ですが、”板長です” とご紹介申し上げると、”おお、板長自らですか”と、恐縮なさるお客様もいらっしゃいます。

 

そんな状況で皆で頑張っていたのですが、お料理を出すタイミングが遅くなって、ご気分が悪かったのかも知れません。

 

”すみません”と呼ばれて、お伺いすると

 

”お隣の、お子さん、もう少し静かにするように言ってもらえませんか?”とのお客様からのご要望です。

 

”申し訳ありません”と言って下がったのですが、さて、どうしましょう。

 

ーーー元気なお子さんの声が響いていたけれど、あんなに可愛いのになぁ。

ーーー泣いて駄々をこねているのではないし、でも、このお客様は不愉快に感じちゃっているのが問題なのよねぇ。

ーーーお子様連れをお断りしている店じゃないし、っていうか、むしろ歓迎している店だしぃ。

ーーーここは、バイトの身の私がどうこうするところじゃないわ。

 

黒服さんの肘をつついて、裏に来て頂いて、事情をお話しすると

”う~ん、それは言えないですよね”

”ですよね!”

 

でも、なんのリアクションもしないと、そのお客様を無視することになってしまいますし、、、

 

丁度、お子様のテーブルのお料理が上がったので、お出ししながら、お声をかけてみました。

 

”おいくつですか?”

”2歳です”と、お母様がお答えになります。

 

お嬢様は、懸命に指で2歳をお伝えになるべく、チョキの手を作っているのですが、難しいです。

おしゃべりする余裕はありません。

黙って指に全集中です。

 

ーーーおっ、今、静かじゃありませんか。お隣のお客様ぁ、お嬢様は静かになさってますよぉ。

 

1本指からのぉ~~~~~

2本!出来た!!!

 

”おおお、上手に出来ましたねぇ。ふたつですね”

 

その後は、ご両親様の箸置きを配膳台に並べたりして、一人で遊んでいらっしゃいました。

一番端のお席なので、何方のお邪魔にもなりません。

 

”○○ちゃん、とうちゃんのお箸ちょうだい”

 

お父様のお箸まで、配膳台に並べてしまったようです。

しかも、“だめぇ~” とのお答えです。

 

”新しいのをお持ちいたします”

 

”あっ、いいです。そこので”

 

お嬢様にお声をかけてみました

”おばさんとご一緒に、パパのお箸を取りに行きますか?”

 

テーブルの下にいらしたお嬢様に、私が急に話かけたので、

ゴツン!

でも泣きません。

 

そして、私とお嬢様は手を繋いで、パントリーの入り口まで。

なんて、小さい可愛い手なんでしょう。

 

先輩仲居さんのUさんがいらしたので

”お箸下さい”

 

”はい。小さいお箸ね。待っててね”

 

”いいえ、パパのお箸を取りにきたのよねぇ”

 

コクンと頷きます。

 

”パパのお箸を取りにきてくれたのね。お手てつないでいいわねぇ。はい、これ!お願いしますね”

と、お嬢様にお箸を手渡してくれるUさん。

お忙しい合間に、優しく対応して下さいます。

 

私が入ったばかりの時に、社員さんの女性にご注意を受けたときも、”叱られちゃったのぉ~?”と、お声をかけて下さったのも、Uさんです。

今も、助けて頂いております。頭が上がりません。

 

お嬢様は、お父様のお箸をしっかりと持って、テーブルまで運んで下さいました。

 

その後、お隣のお席のお客様も、ゆっくりなさっておいででした。

お客様のご期待には添えなかったとは思いますが、気分を害してお帰りになるなどという最悪なことにはならずにほっと致しました。

 

クレームを頂戴したときは、どうしようかと思いましたが、そのお陰で、私は可愛いお嬢様と親しくさせて頂いて、とても癒されました。

 

 

追記

お子様のご両親様は、”もう少し、小さな声でお話しましょうね” とか

”ちゃんと、座ってなさい”とか、周りに気を使っていらっしゃいました。

ここは、ちゃんと書いておくべきでした。

 

エミータさん の 

http://blog.hatena.ne.jp/sutekidane/

のコメントを参考に追記させて頂きました。