着なくなった袷の着物を再利用する場合、裏を付けたまま使う場合もあります。
例えば、雨具としての裾避けなどは、そのまま丈を着るだけで作ります。
私がお茶事に使う和室は、母が踊りのお稽古もする多目的なお部屋なので、普段は大切な床の間を守るために袷の着物をそのまま切って、カバーとして使っています。
半畳+1/4の幅の我が家の床の間には、幅も丁度良いです。
これは、私が接ぎ合せたものではなく、もともと別の2反の生地を半幅づつミシン縫いで合わせた後に、仕立てたという、何故ここまで手間のかかったことをしたのか謎の着物です。
鈴乃屋で仕立て上がりを買いました。
モダン過ぎるこの着物は、母には似合っていたと思いますが、
”変わってるねぇ。どうなってるの?”
”食い詰め浪人のようだね” などと言われ、我が家では<浪人着物>と呼んでいました。
古い袷の着物をほどして、表だけを使って、胴裏の生地が余ることが多いです。
残念ながら、裏生地を表舞台で活躍させる発想は浮かびませんが、私は幅をそのままに袋に縫って、帯を入れています。
たとう紙(多当紙と書くようです)に包んでおくと、中にどの帯が入っているか分かりづらいですし、表面に<絽白桐>などと書いておいても、何本か衣桁に下げたままになってしまうと元のたとう紙に戻すのはひと手間です。
以前のたとう紙は、和紙で出来ていたのでとても丈夫でしたが、今の物は出し入れしているうちにボロボロになってしまいます。
裏地で作った袋にいれておけば、ちょっとのぞけば見えますし、生地が薄いので、そのままでも透けて見えて便利です。
着物の柄のアウトラインに金が使われることがよくあるのですが、そのまま畳んでしまうと、その金が別の場所に付いてしまうことがあります。
それを防ぐには、着物が重なる間に布などを挟んで防止するのですが、胴裏の生地が使い勝手が良いです。
間違ってもティシュを使ってはいけません。ティシュ自身がくっついてしまい、なかなか取れません。
胴裏でしたら、訪問着の裾に広がる柄に対応できる大きさもありますし、逆に半幅で十分な場合には半幅を使えば良いのです。
薄いので、がさ張らないもの良い点です。
洗濯屋さんから戻ってきたままのコートなどにかけてあるビニールのカバーは衣類には良くないと聞きます。
胴裏の生地は十分にありますので、長めのコートでもすっぽり包めるカバーを作ることが出来ます。