母と私の着物ぐらし

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子供は大人の話を聞いています

幼稚園に入る前の記憶です。

ご近所で結婚式がありました。

群馬の山間部のことです。以前は、自宅で披露宴をしたものです。

ちょっと裕福なお宅の、その披露宴で花嫁花婿のお手伝いをする男女の子供が、披露宴の演出上必要になりまして、その家には男の子しかいなかったので、私が頼まれました。

当時、3歳の七五三で着物を用意してもらえる子供は少なかったのですが、私は着物好きの母が作ってくれていたので、”〇〇ちゃんは、着物もあるし、、、”ということでした。

 

そこのお宅まで伺って、床の間の前で何か練習したことも覚えています。

大した事をするわけではありません。

今ですと、ウエディングドレスの裾を子供に持たせたりしますね。

あんな役割だったと思います。

子供ながらに、大切なお仕事に私が選ばれたという誇らしい気持ちと、大好きな着物を着てするお仕事だというのが嬉しくて楽しみにしておりました。

 

でも、そのお役、結局は断られました。

ある日、頼みにいらした同じおばさんがいらして、祖母に話をしていました。

そのおばさんは、祖母に頭を下げて謝ってらして、その言葉の中に、”〇〇ちゃんは、お父さんがすぐに死んじゃったから、エンギガワルイ”というのがありました。

 

幼い私としては、よくは解からないけれど、どうやら父が私が生まれて間もなく亡くなったことで、練習までした係を私がすることは出来なくなり、他の人に代わられてしまうということは理解しました。

 

大きくなるにつれて、<縁起が悪い>の意味もわかるようになりました。

そう言われたことですごく傷ついたというわけではありません。

父が亡くなっているのは事実ですし、仕方のないことです。

ただ、ある時期までは、自分は縁起が悪い人間だと思っていたように思います。

 

客観的に見て、ひどいです。

その時の幼気な(いたいけな)私、可哀想です。

 

恐らく、私に頼みにきたおばさんは、私のことを縁起が悪いとは思っていなかったのだと思います。

でも、田舎のことです。親戚の誰方かが、縁起が悪いと言い出されて、おばさんも頼みに来たり、断りに来たりでどんなにか気まずかったと思います。

そばで遊んでいるだけの私が、大人の話を盗み聞きしているとも思わなかったのでしょう。

でも、子供は意外に聞いています。自分に関係していると直感し、真剣に聞いています。

聞いていたとしても、その内容は解からないだろう。

確かに、その時は解からなくても、意味がわからないまま暗記して、成長するにつれて理解します。

 

この方を反面教師とするなら、何も真正直に<縁起が悪い>と言わなくても、親戚の女の子にさせることにしたとか、上手に嘘を言っても良かったのではないかと思うのです。

大分、後になって母にこの話をしましたら、当時、母とは別に暮らしておりましたので、母は知らなかったらしく、涙ぐんでいました。

”気にしないで下さい”と応対していた祖母も、本当は、可愛い初孫の私を縁起が悪いと言われてしまって切なかったことと思います。

 

現在は、母と二人、幸せを感じながら生きておりますので、二人で飲みながら、この話題になったとしても、”縁起が悪いはないよねぇ”と笑えます。