着物のことは、手っ取り早く母に聞いてしまいます。
ハクビで教授の資格まで頂いておりますし、仕立ても出来る母です。
何より着物の生活が長いです。
下手な呉服屋さんよりも、ずっと詳しいです。
母には、色々なこだわりもあります。
その一つが、
帯付き(着物と帯のみで、上着を着ない状態)で出歩くものではない。
よそ様へお邪魔するときは、外の埃や塵をそのお宅に持ち込まないように、道中着と言うものを着て、お玄関先でそれを脱いでから上がらせて頂くもの。
私は、そう教えられてきました。
でも、6月の衣替えも過ぎますと、暑いじゃないですか。
道中着なんて着たくない訳です。
母に言わせると
”暑いからね。まあ、いいんじゃない。帯付きでも許される時期だよね。”
となります。
確かに、真夏の薄物の頃にも、ご年配の方が紗の道行をきちっとお召しになっていらっしゃるのを見かけます。
仲居さんバイトの先輩も、どんな季節でも、道中着を着ていらっしゃる方がいます。
私は、暑くて我慢できませんが、その方は道中着を着ないと気持ちが悪い、出かける気にならないとおっしゃいます。
着物に対して一本筋が通っていらっしゃるなぁと尊敬しております。
先日、着物の展示会のお手伝いをしたいと希望したのですが、残念な事件がありました。
そのことを切っ掛けに、着物のことについて勉強しなおそうと思い、本を買ってみました。
着物の常識を学べるテキスト的な本ではありますが、婦人画報の<美しいキモノ>並みにカラーで綺麗です。
どれどれ、ふんふん
う~ん、買わなくても良かったかな?
でも、素敵な着物姿を見るだけでも楽しいわぁ。
やはり、着物っていいわねぇ~。
読み進め、羽織とコートについて触れられているところになって驚きました。
<コートを着るのは、紅葉が色付き始めた頃で、桜が満開になったら帯付きになるというルールがあります。>
と書いてあります。
そのまま受け取ると、夏に道中着を着るのはルール違反みたいになりませんかっ!
早速、母に言いますと、ほぼ憤慨です。
先様に埃を持ち込まないという他にも、道中着には帯を守ってくれるという役割もあります。
暑い時期には道中着を着ない私が言うのも何なのですが、お尋ねするお宅に埃などを持ち込まない配慮って、いかにも日本人らしくて素敵だと思うのです。
そのマナーを知っていれば、コートはどこで脱ぐものなの?と迷うこともなくなります。
少し、ガッカリしてしまって、その次を読み進めるのをやめてしまいました。
文化は変わって行くものとは解かっているつもりです。
言葉がそうですね。
本来はこうこうでしたが、今はこのように使いますってことがあります。
ものすごく可愛い!などとは以前は使いませんでした。
すごいは、陰にこもって物凄くのように、お化けが出るような時に使ったのです。
まあ、いいのです。
言葉は多数決です。
私も、あえて、若いふりをして使う時もあります。
”ぜんぜんOKで~す!”などと。
(本来全然は、そのあとに~ないと否定が続く言葉です)
以前、衣替えのことについて
<日本列島は南北に細長いのだから、はい!6月です!衣更え!って全国一斉にというのは無理がある。10月の衣替えは尚更で、沖縄の人に10月だから袷の着物を着なさいっておかしい。>
とおっしゃる方がいらして、
確かに。と思う反面、その方が東京の11月のお茶会に単衣をお召しになっていらっしゃるお姿には違和感を覚えました。
(本来は、10月の衣替えで袷の時期になっているのに、ひと月もが過ぎた11月に、未だ単衣を着ていることに対して)
私の着物の常識は母から引き継いだものです。
母も、祖母から教わったことも多々あります。
文化の継承は基本的には母から娘へというような、極々身近なことなのかもしれません。
立派な方が書かれた本には、大きな影響力があります。
とは言え、せめて、私の身近にいる方には、私がどのような考えで着物を楽しんでいるかをお伝えしたいです。
その後、その方がどのように好まれて行くかは、その方の自由です。
文化は変わって行くものなのですから。