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主菓子 ~ 心惹かれるその名(めい) 初夏から冬へ ~

 

hohoan.hatenablog.com

お菓子の季節を初夏へと進めます。

五月初めには、端午の節句があります。

桜はとうに散ってしまいましたが、あやめ、かきつばた、あじさいなども咲いて参ります。

梅雨が来て、蛍の季節にもなります。

 

若武者

兜の形で ”若武者” と名付けると、立派に育ってほしいという親心まで感じます。

 

富貴草

牡丹の別名です。

 

青楓 (あおかえで)

楓は秋の紅葉だけではなく、初夏の清々しい若葉も魅力的です。

 

風薫る

”薫風” というと堅い感じになるところを ”風薫る” としたところが素敵です。

  

唐衣

からころも (唐衣)

きつつなれにし (着つつ慣れにし) 

つましあれば (妻しあれば)

はるばるきぬる (はるばる着ぬる)

たびをしぞおもう (旅をしぞ思う)

の歌の各句の頭の文字を並べると ”かきつばた” になっているという洒落たものです。在原業平の歌で、この技法は 折り句 というそうです。

 

早乙女

”早乙女” の ”さ” は、”桜” の ”さ” と同じく、田の神様を意味しています。

田の神に仕える乙女という意味で、田植えをする女性をいいます。

 

手毬花

紫陽花の別名です。他にも ”四ひら” ”七変化” ”八仙花” などの名前がありますが、”手毬花” とは可愛らしいです。

 

清流

いかにも清々しい名です。

 

雨上がり

長雨があるからこそ、お日様のありがたみを感じられます。また、雨が埃を流してくれるので、全ての物が陽を浴びて輝きます。

 

初蛍

光を放ちながら、川辺を蛍が飛ぶ情景はとても美しいものです。

その年に初めて現れた蛍が ”初蛍” です。

”鳴かぬ蛍が身を焦がす” などとも言いますが。”初蛍” には初々しさがあります。

 

蛍が飛び交うと、いよいよ夏も本番です。

7月には七夕があります。

 

願い笹

七夕の意匠もたくさんあって、”織姫” や 織姫にちなんで ”糸巻” や、”天の川” などもありますが、笹飾りを ”願い笹” としたところが素敵です。

 

岩清水

深山の岩から湧き出る清らかな水。本当に涼しそうです。

 

瀬音

浅瀬を流れる水の音をいいます。

 

金魚のひるね

この名を聞いたら、どなたでもほっこりするのではないでしょうか。

♪ 赤いべべ着たかわいい金魚 お目めを覚ませばごちそうするぞ ♪

♪ 赤い金魚はあぶくをひとつ 昼寝うとうと夢から覚めた ♪

 

宵花火

和菓子は、どれも美しいですが、この名のお菓子は、特に美しいものばかりです。

名前も形も美しいお菓子です。

 

月うさぎ

これと見た目そっくりさんで、” 雪うさぎ ”というのもありますが、どちらも可愛い名です。

 

秋津

とんぼの別名です。

秋津国、秋津島は日本のことです。

とんぼは害虫を食べてくれる益虫で、五穀豊穣の象徴でもあります。

また、前にしか進まないことで、縁起の良い ”勝ち虫” といわれ、兜の前立てにも使われました。

 

着せ綿

9月9日の重陽節句に、菊の上に真綿をのせておいて、菊の露を含んだ綿で体を拭くと邪気が払われ寿命をのばすと言われています。

赤い菊の上に白い綿がのっている姿を表わした可愛いお菓子です。

 

まさり草

”勝り草” とも ”優り草” とも書き、菊の別名です。

 

嵯峨野

嵯峨野は、古くから紅葉、秋草、秋の虫の名所とされています。

嵯峨野にも四季は訪れますが、嵯峨野と言ったら秋のイメージのようです。

 

木守り

”来年もよく実りますように!” の願いを込めて、木に一つだけ残しておく果実のこと。

柿には限らず柚などにも使うことを、最近まで知りませんでした。それほどに柿のイメージが強いです。

 

小牡鹿(さおしか)

”さ” は接頭語で意味はなく、オスの鹿という意味で、小鹿ではないのです。

牡鹿がよく鳴くのは秋で、古の人々はその声にもののあわれを感じたということで歌にも詠まれています。”奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき”(百人一首

 

竜田川

紅葉の名所である竜田川

”千早ふる神代もきかず竜田川からくれないに水くくるとは”(百人一首)は落語の題材になるほど有名ですね。

 

錦秋

紅葉が錦の織物のように美しい秋という意味です。

 

吹き寄せ

いろいろな木の葉がひと所に吹き寄せられた様子を言います。

落ち葉とはいえ、楓の赤、銀杏の黄色、松葉の緑と色とりどりです。

主菓子、干菓子、お料理などにも多く使われる名前です。

 

風花 (かざはな)

晴天時に風に舞うようにちらつく雪、また、山に積もった雪が風に飛ばされて小雪がちらつくことを言います。きれいな言葉です。

 

冬ごもり

人や動物が冬の寒い間、家や巣や土の中にこもって過ごすことですが、本来は、草木が冬になって葉を落とし、その精気が地中深くもぐることをいったそうです。

冬の間にも、芽吹く春の準備はされているということです。

 

まだまだ、素敵な名はたくさんありますが、私が特にこころ惹かれる名を選びました。お菓子の名ひとつからお茶事の趣向を思いつくこともございます。

新型コロナが収束して、お茶事のご案内を出来る日が一日も早く来ることを祈りつつ、私も、季節はずれの冬ごもりを致します。