母と私の着物ぐらし

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着物の柄 ~ 一年中着られる柄と季節の柄 ~

 着物には、一年中着られる柄と、その季節を外すと、残念になってしまう柄とがあります。

もちろん、着物はご自身の好きな色合い、柄、風合いのものをお召しになるのが一番です。

桜が好きなので、秋だとて桜を身に着けたいというのも、それはそれで有りだとは思います。

呉服屋さんなどでも、” 桜は、一年中、日本のどこかでは咲いているのですから、いつでも着られますよ ”などと勧められることがあります。

” あえて ”のお洒落も個性的で素敵ですが、一般的にはどう考えられているかは知っている方が良いと思います。

 

< 一年中着られる柄 >

 四君子模様は、蘭、竹、菊、梅が描かれています。それぞれ四季を代表するものなので、どの季節でも着て頂ける、また、気品のある、おめでたい柄ともいわれています。四君子が、花輪に描かれたり、花車に乗せられたりと可愛らしいデザインも多く、私も大好きな柄です。

お茶を習い始めたお嬢さんに、お茶会用に一枚作りたいと相談されたら、四君子模様をお勧めします。春、秋の両方のお茶会に対応出来ますし、四君子が、お互いに主張し過ぎず、上品に納まっているので、お茶道具の邪魔にもなりません。

桜の季節に、喜んで桜の着物でお茶会に出かけましたら、席中の主茶碗の柄とあまりに似た感じで、少し居心地の悪いことがありました。

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四君子にこだわらなくても、御所解き模様のように、御殿のお庭に、松、梅、竹、菊、あやめ、桔梗、楓など四季折々の草花が描かれたものもあります。

 

辻が花などは、現実に存在する花ではないので季節は問いません。

 

松竹梅や鳳凰、鶴、亀、桐、葵、菊などは吉祥模様といわれ、いつでも着ることが出来ます。

菊は、秋のイメージも強いと思いますが、不老長寿の薬と考えられ、吉祥模様に入るそうです。重陽節句には、菊にかぶせておいた菊の香いっぱいの朝露を含んだ綿で体を拭いて邪気を払うと言います。お酒に菊の花びらを浮かべて飲んだりもしますね。

蝶は中国では長寿の象徴なのだそうです。ですので、吉祥模様と言えます。また、春の蝶は季節を代表することも出来ます。ただ、蝶には、亡くなった方の魂が宿るとも言われます。儚く美しい蝶は、お茶道具にも見られますが、追悼の茶会などで使われることが多いのです。

 

有職模様(ゆうそくもよう)も通年着て頂けます。

平安時代の貴族の十二単や調度品に使われていただけに優美な織模様です。七宝、花菱亀甲、雲鶴、向蝶など色々あります。

 

< 季節の柄 >

着物は、衣替えのしきたりもあるように、季節感を大切にします。

花柄は、その花の季節に先駆けて取り入れて、季節が終わるまでに着納めるというのが一般的な考え方だと思いますし、私もそれを心がけています。

 

桜の季節、短いですね。2~3週間というところでしょうか?

開花予想が出る頃から、少しフライングしたとしてもひと月足らず。

その間だけのための、着物や帯ってとても贅沢です。

その贅沢なところが、また、着物ぐらしの楽しみでもあるのです。

 

日本人が大好きな桜だけに、着物や帯もたくさんの意匠があります。

写実的なものは、やはり桜の時期に着るのがお勧めですが、枝や葉が描かれていないものは、季を選ばずに来ても良いのだそうです。

 

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この帯、お茶の先輩からの頂き物です。

限られた桜の時期に、なかなか着るチャンスが無いからとおっしゃって、一度もお締めにならないまま、早々に私にお譲り下さいました。

その方からは、やはり真っ新のあやめの帯も頂戴しております。

そうなのです。時期を選ぶものは、着るチャンスを逃してしまうという恐れもあります。

私は、ありがたく着させて頂いております。

季節ごとに、それに合わせた装いを考えるのも、実際に身に着けるのも、本当に楽しいことです。