母と私の着物ぐらし

着物の決まり事 日々のコーディネート 趣味の茶事 母との暮らし 仲居さんのバイト

仲居さん日記56

新しい店長が見えました!

そして、黒服さんはいなくなりました。

 

これまでも、黒服さんとの私的な会話はほとんど無かったので、転勤が話題になるはずもなく、ある日出勤したらいませんでした。

 

ありがたいことに、新しい店長はやる気に溢れていて、お若くて、よく動かれて、私たちおばさんにも気配りをして下さって

 

ハッキリ言って、

    

 

とっても楽しくなりましたぁ~~~

 

その少し前に板長も変わられました。

これまでの板長も、お人柄は申し分なかったのですが

今度の板長は、私が入った時に板場におられた方で、ピカイチの腕っぷしをお持ちです。

お料理が!

盛り付けが!!

素晴らしいです!!!

なので

     

とっても楽しくなりましたぁ~~~

 

気合を入れ直して、頑張りたいと思います。

私なりにですが。

 

そんな中、担当させて頂いたのは、私の大好きなご両家お顔合わせでした。

 

お婿さんのお父様が、もう、最初から満面の笑みでそれはそれは嬉しそうなご様子でした。

お嫁さんが、とても可愛いらしい方なんです。

お料理をお出しする度に

”ありがとうございます!”と明るくお声をかけて下さいます。

ふと、振り返っお顔はピッカピカ!

 

―ーーうっ!眩しい

 

     眩しい人のイラスト(女性) 

 

”お嬢様、お肌がぴっかぴかですね。まぶしいほどでございますよ”

 

と、お婿さんのお母様が

”ほんとにねぇ~”  と、にっこにこ。

 

お嫁さんのお父様は、元々飲まれないようで、ノンアルコールビール、お嬢様はソフトドリンク。

他の皆さんは、お酒が進みます。

 

お婿さんのお父様は、ちゃめっ気のある方で、皆さんの追加のお飲み物を伺って、部屋から出ようとすると

 

”あっ!お姉さん”

”はい”

”呼んでみただけです” (てへっ)

 

ここで、奥様に叱られます。

 

”お忙しいのに、何やってんのっ!!”

 

”大丈夫でございます。お父様は私の顔をもう一度見たかっただけですね”

 

”へへへ、解かってるねぇ”

と、こんな調子です。

 

 

途中、どうやら、ひとことスピーチをすることになったようです。

私がお部屋に伺った時は、ちょうど、そのお父様の番でした。

前後がよく解からないのですが、

ん?涙声?

 

”ああ、涙が出てきちゃった”とおっしゃって、ゲンコで涙を拭いていらっしゃいました。

 

よほど嬉しかったんでしょうね。

コロナの影響で、お顔合わせのタイミングも難しいとか、色々あったのかもしれません。

なんか、可愛らしい。

とっても良い方なんだなぁと感じます。

こちらも胸が熱くなりました。

 

裏に入って

その日は先輩仲居さんのUさんもご一緒でしたので

 

”お父様が嬉しくて泣いておられました” と、早速、ご報告。

 

”ああ、お嫁さんのお父さんねぇ”

 

”いえいえ、お婿さんのお父様です”

 

”ふえ!、珍しいねぇ”

 

確かに。

 

 

お酒が落ち着いたようでしたので、伺うと、お食事で良いとのことでしたのでお運びいたしますと、お父様が

 

”これ、お替りしてもいいですか” と、空のグラスを上げられました。

 

ーーーあら!まだ、お酒を楽しんでいらっしゃるのに、お食事を持って来てしまいました。

でも、いいって言ってたしぃ

 

などと考えていた私の顔が、不審な感じだったのでしょう。

 

お父様が

”あっ、もうダメ?”

 

”いえいえ、飲んで頂くのはこちらと致しましても有難いのでございます。すぐにお持ち致します”

 

”ああ、良かった。ありがとー”

 

 

さて、お食事の後はデザートです。

お食事のお進み具合を覗きに参りますと、お父様が

 

”ちょっとお化粧を直しに行ってきます” と、相変わらずの笑顔で私に話しかけられます。

 

”そうですね。お父様先ほど泣いていらっしゃいましたものね。涙の後を落としていらして下さい”

 

”見てたのぉ~いやぁ~恥ずかしいなぁ~”

 

”いいえ、とても感動的でございました”

 

”裏では、お嫁さんのお父様?ってなりましたけど”

 

と、

”私は、いたって冷静です” 

 

お嫁さんのお父様が、ツッコミ?ボケ?

とにかく、良い感じの返しでしたので、みなさんとご一緒に笑いました。

 

お帰りの時、お父様がいち早くお部屋を出ていらしたので、ご来店のお礼を申し上げておりますと、次に出ていらしたお嫁さんのお母様に

 

”上品なお店なのにうるさかったって叱られてます”

な~んて、またまた冗談をおっしゃいます。

 

”お陰様で担当させて頂いて私も楽しゅうございました。お顔合わせで、シーンとしていたら心配になります”

 

”だよね”

 

”また、是非お出かけくださいませ”

 

”はい”

 

そして

 

”また、ここに来ようなぁ”

と、皆さんにお声かけして下さいました。

 

お父様のことばかりになってしまいましたが、お婿さんも爽やかなイケメン。

ぴっかぴかのお嬢様と実にお似合いです。

 

お顔合わせは、親御様がお支払い下さることも多いのですが、お若いお二人から頂戴いたしました。

 

お二人にはこっそりと

”今度はお二人だけでもお出かけ下さいましね。夜景も綺麗です”

とお声をかけさせて頂きました。