~群馬にご縁があるとおっしゃるご夫婦
父も母も群馬の人です。
私は、前橋の病院で生まれて、生後半年までは前橋。
その後、父が亡くなって、母の実家である、川場村というところで、小学校1年生までを過ごしました。
物心がついた時は川場におりましたので、川場が私の故郷です。
その後は横浜に1年。
さらに、その後は品川区に6年。
そして、今は足立区に長く住んでおります。
つまりは、東京の人なのです。
ところが、先日、お出で下さったお客様が、突然、
”お姉さんは、東京の人?”とお尋ねになりますと、とっさに
”いいえ、群馬でございます”と答えてしまい、自分でも驚きました。
丁度、群馬の叔母からお餅が着いた翌日でしたし、先日は叔父がこんにゃく芋などを送ってくれたので、群馬ぁ~になっていたのかも知れません。
すると、そのお客様が
”そう、群馬ぁ。いやね、我が家ではちょっと群馬に縁があってね。
娘のお婿さんが群馬の人なんですよぉ”
”まあ、それは、ちょっとではなく、深いご縁ではないですかぁ”
”ああ、まあね。群馬はどこなの?”
ーーーこれ、困るのよね。明らかに関西訛のお客様がご存じのはずはない川場村。
”前橋?”
”いえ、もっと山間部の方でして、か・わ・ばという所です。
三本線の川に場所の場です。いかにものどかな地名でございましょ”
”ふ~ん、どの辺?”
ーーーおおお、けっこう、聞いてくる、、、
ーーーなん言えば解かって頂けるかな?有名な地名でっと。
”ええと、草津温泉と、老神温泉の間のようなところです”
これ、ダメな答えでした。
まず、範囲が広すぎて絞れませんし、私が有名だと思っている老神温泉をお客様は御存じではありませんでした。
”さっきも言ったけど、群馬に縁が出来てね、行く機会もあるんだけど、温泉は何処がいいかなぁ”
”はい、四万温泉をお勧め致します”
ーーーそうそう、四万なら間違いない!誰に聞いても四万のお湯はいいって言うもの。
ーーー私は行ったことがないけれど、絶対行きたいところだし、、、
”四万温泉は行ったんだよ。確かに良かった”
”でしたら、やはり、草津ですね”
”草津も行ったんだよ”
”う~ん、ああ、伊香保温泉はいかがですか”
”伊香保も行ったんだよ。あなたがさっき言ってたオイなんとかって温泉はどこなの”
”老神でございますか?不便なところでございますよ。山の中なので、お料理も、、、”
”どの辺?”
”ええええ、新幹線ですと、上毛高原ですね。昔は、急行があって、沼田という駅が最寄り駅なんですけど、本当に不便になってしまいました”
と、ここで、私の気持ちは沼田の駅に降り立ってしまいました。
”迎えは来てくれるの”
”ええ、叔父がおりますので”
”・・・”
”えっ!あら!いやだ、ホテルのお迎えでございますね”
汗が出ました。なんて、素っ頓狂な答えでしょう。
恥ずかし~~~い
”老神は、不便なところなので、お迎えのあるホテルも多いと思います。
お料理はお気に召して頂けたようで、お帰りには ”美味しかった”とおっしゃっていただきました。
お主人は、もう一度 ”おい何とかってなんていう温泉だった?”とお尋ねになられたので、メモに
老神温泉と大きく書いて、
その横に小さく川場温泉と書きました。
実は、我が故郷川場も昔からの湯治場でございます。
群馬では、脚気川場に瘡(かさ)老神という言葉がございます。
脚気には川場温泉に効用があり、皮膚の荒れには老神温泉が良いということです。
ここで、これまでお話させて頂かなかった奥様が
私の近くまでお出で下さって、
”あなたの着物姿、とてもいいわぁ” と、私の腕を優しく撫でて下さいました。
こんな風に誉めて頂けることはあまりありません。
群馬のご縁のお陰でしょうか。
家に帰って、この話を母にしましたところ
”水上温泉は?”
ああ、私はすっかり忘れていました。
さすが、母は本物の群馬出身者です。