爽やかな青年お一人様
コロナ禍で飲食店は大打撃です。
私のバイト先は、元々ご年配のお客様の多い店です。
ご高齢者は、とても真面目でいらっしゃるので、<STAY HOME>と言われれば、なかなか外出することをなさいません。
これまで頑張って働いて、日本の高度成長を支えていらして、さて、晩年は、たまには旅行や外食を楽しみたいと思っていらした方々に、コロナは正に禍です。
さて、先日のバイトの日は、ご予約は無し。
フリーのお客様もなかなか入って下さいません。
0の日があるとは聞いておりますが、私の出勤の日には、まだそれは無かったので、祈るような気持ちでお待ちしておりました。
半分諦めかけた頃、いらっしゃいました!爽やかな青年!お一人様です。
一番奥の、川が目の前に広がるお席をお勧め致しました。
途中、真ん中のお席が気になるご様子でしたので、
”こちらでもよろしいのですが、少し、目の前のビルが視界のお邪魔になるので、奥のお席をお勧め致しましたが、いかが致しましょう?”
”ああ、なるほど”
お席に着かれて、
”すごい!素晴らしい、景色ですね。”
”ありがとうございます。花火の時は特等席でございます。”
Tシャツにリュックというお姿でしたので、ご旅行中かと思いましたら、ご近所の方だそうです。
”僕の部屋からも花火は見えるんですけど、ここからは、さぞや綺麗に見えるんでしょうねぇ。”
”はい。真正面にご覧いただけます。私どもも後ろで拝見させて頂きます。
昨年は出来なくて残念でございました。今年も10月の予定にはなっていますが、決定ではございません。”
”上がるといいですね。花火。”
”はい。本当に。
元々、疫病で亡くなった方の鎮魂と、疫病退散の願いが込められたものと聞いております。今のこの時にぴったりだと思うのですが、、、”
”そうなんですかぁ。尚更、上げたいですね。問題は密ですね。う~ん。”
~ ちなみに ~
<隅田川花火大会>の前身である<両国の川開き>は、あの暴れん坊将軍8代吉宗が大飢饉とコレラ(ではないかと言われている)の流行で亡くなった人々の鎮魂のために、水神祭を行い、両国橋近くで花火を打ち上げたことが由来となっています。
”予約は、一年前からとかなんでしょうね。”
ーーーいけない、いけない。花火を盛り上げ過ぎました。予約はまず取れません。
―ーー話題を変えましょう。
”そうですねぇ。難しゅうございます。”(ここはマスクの下でも笑顔で)
”桜の頃も見ごたえがございます。あと、お天気に恵まれますと、筑波山もご覧いただけます。”
お若い方なので、ささっと召し上がるかと思いきや、ごゆっくりと、景色をお楽しみ頂きながらお食事を楽しんで下さっているご様子です。
それこそが、我がバイト先での正しいお食事の仕方と私は信じております。
そして、そうしてお食事して頂いた方は、お店をお気に召して頂けます。
デザートをお出しする前に、お膳をお下げします。
いつも、思うことですが、お若い方は、香の物に手を付けない方が多いです。
お刺身のツマも、召し上がりません。青紫蘇の葉とか大根とか美味しいのになぁ。
”お若い方は、香の物を召し上がりませんね。”
”あっ、白いご飯と食べるイメージなので、ご飯に味が付いていたので、食べるタイミングがわからなくて、、、。”
ーーー何?その理由!可愛い過ぎやしませんかっ!
”途中で、お口直しとか、、、あっ、申し訳ありません。うるさいですよね。”
ーーーたいへん!たいへん!あの店、おばさんが鬱陶しいんだよなぁの印象になってしまう。
”ああ、いいえ。そっか。お口直しかぁ。”
あくまでも爽やかな青年です。
しかも、イケメン!
私にとって子どもは、妹弟子の娘ハイジ(あだ名です。高1)が基準なのですが、自分の歳をしみじみと考えてみれば、このお客様くらいの子どもがいてもおかしくないのかぁと思ってしまいました。
この方のお母様、羨ましいです。
また、いらして下さいねぇ~。
お待ちしていま~~~す。