母と私の着物ぐらし

着物の決まり事 日々のコーディネート 趣味の茶事 母との暮らし 仲居さんのバイト

仲居さん日記31~ありがたいお言葉

店の者は<浦霞の方>とお呼びしている奥様がいらっしゃいます。

 

先ずは、生ビールを、拝見していても気持ちの良い程、くぅ~~~とお飲みになり、その後は、必ず<浦霞>をご所望になります。

 

宮城県の銘酒<浦霞>。

バイト先では、その中でも、<純米吟醸 浦霞 禅> をご用意しております。

奥様のお気に入りの銘柄です。

 

奥様は、姉妹店のお隣のレストランの方へご来店のときも、ワインよりも<浦霞>をご希望で、店長が和食の方へ小走りで取りに来ます。

 

いつもはお友達とご一緒にご来店下さいますが、先日は、珍しくお一人でお見え下さいました。

 

窓の方を向いた、奥のお席にご案内致しました。

”あら、お席によって又、景色が変わるわねぇ~このお席もいいわねぇ~” 

 

いつもは、中央のお席にご案内することが多かったようです。

 

いつも穏やかで、しかも、おしゃれでお綺麗な方です。

お住まいはお近くではありますが、大きな橋を渡ってご来店下さいます。

詳しくは存じませんが、社長夫人でいらっしゃいます。

 

生ビールをお持ちして

 

”奥様、いつもありがとうございます。”

 

”わたし、ここが好きなのよね。今日は一人で来ちゃったわ。

いいわよねぇ~ここからの景色。”

 

”ありがとうございます。

私も、勤めている身ではありますが、ここは良い店だと思っております。

まず、広々としておりますので、このような時ではございますが、ご安心して召し上がって頂けると思います。”

 

”そうなのよ!もっと近くにお店もたくさんあるんだけど、ここに来たくなっちゃうの。”

 

”橋の向こうとこちらでは、違う町の様でございますね。こちらは静かでございます。”

 

”そうなのよ!だから、橋を渡って来ちゃうのぉ。

でも、なんか、今日は一人で来ちゃって、この景色もひとり占めで、悪いわぁ。”

 

この日、50名様の宴会もお受けする細長いホールに、お客様は、奥様お一人です。

 

更に、ありがたいお言葉は続きます。

 

”この店で、こうやってお食事して、また、頑張って働けるわ。”

 

冥利に尽きるとはこのこと。

 

”そんな風におっしゃって頂いて本当に嬉しゅうございます。

ありがとうございます。ごゆっくりなさって下さい。”

 

と、下がりました。

 

他にお客様はいらっしゃらないので、お話相手をするのは全く構わないのですが、今は、おしゃべりもご遠慮した方が良いと思っております。

 

 

”ご馳走様ぁ。また来ます。”とおっしゃってお帰りになりました。

 

明日から、アルコールの提供が禁止されます。

とても、とても残念ですが、お酒が蔓延の原因になっていることは事実のように感じます。

飲食店だけが悪いのではなく、全てひとくくりにして、アルコールの提供を禁止というのは、理不尽にも感じますが、緊急の対策とは、そういうものかもしれません。

それにしても、コンビニの前で車座で飲む方々もいらっしゃるとか、、、

私には考えられません。

 

本当に厄介なものが流行してしまいました。

皆さんで少しづつ我慢して、ご自分とご家族を守るしかありません。

 

浦霞の方>は、きっと、解禁になったら真っ先にお出で下さることでしょう。