店の者は<浦霞の方>とお呼びしている奥様がいらっしゃいます。
先ずは、生ビールを、拝見していても気持ちの良い程、くぅ~~~とお飲みになり、その後は、必ず<浦霞>をご所望になります。
バイト先では、その中でも、<純米吟醸 浦霞 禅> をご用意しております。
奥様のお気に入りの銘柄です。
奥様は、姉妹店のお隣のレストランの方へご来店のときも、ワインよりも<浦霞>をご希望で、店長が和食の方へ小走りで取りに来ます。
いつもはお友達とご一緒にご来店下さいますが、先日は、珍しくお一人でお見え下さいました。
窓の方を向いた、奥のお席にご案内致しました。
”あら、お席によって又、景色が変わるわねぇ~このお席もいいわねぇ~”
いつもは、中央のお席にご案内することが多かったようです。
いつも穏やかで、しかも、おしゃれでお綺麗な方です。
お住まいはお近くではありますが、大きな橋を渡ってご来店下さいます。
詳しくは存じませんが、社長夫人でいらっしゃいます。
生ビールをお持ちして
”奥様、いつもありがとうございます。”
”わたし、ここが好きなのよね。今日は一人で来ちゃったわ。
いいわよねぇ~ここからの景色。”
”ありがとうございます。
私も、勤めている身ではありますが、ここは良い店だと思っております。
まず、広々としておりますので、このような時ではございますが、ご安心して召し上がって頂けると思います。”
”そうなのよ!もっと近くにお店もたくさんあるんだけど、ここに来たくなっちゃうの。”
”橋の向こうとこちらでは、違う町の様でございますね。こちらは静かでございます。”
”そうなのよ!だから、橋を渡って来ちゃうのぉ。
でも、なんか、今日は一人で来ちゃって、この景色もひとり占めで、悪いわぁ。”
この日、50名様の宴会もお受けする細長いホールに、お客様は、奥様お一人です。
更に、ありがたいお言葉は続きます。
”この店で、こうやってお食事して、また、頑張って働けるわ。”
冥利に尽きるとはこのこと。
”そんな風におっしゃって頂いて本当に嬉しゅうございます。
ありがとうございます。ごゆっくりなさって下さい。”
と、下がりました。
他にお客様はいらっしゃらないので、お話相手をするのは全く構わないのですが、今は、おしゃべりもご遠慮した方が良いと思っております。
”ご馳走様ぁ。また来ます。”とおっしゃってお帰りになりました。
明日から、アルコールの提供が禁止されます。
とても、とても残念ですが、お酒が蔓延の原因になっていることは事実のように感じます。
飲食店だけが悪いのではなく、全てひとくくりにして、アルコールの提供を禁止というのは、理不尽にも感じますが、緊急の対策とは、そういうものかもしれません。
それにしても、コンビニの前で車座で飲む方々もいらっしゃるとか、、、
私には考えられません。
本当に厄介なものが流行してしまいました。
皆さんで少しづつ我慢して、ご自分とご家族を守るしかありません。
<浦霞の方>は、きっと、解禁になったら真っ先にお出で下さることでしょう。