昨日、仲居さんの着物と被りたくないお客様がご来店になりました。
もやは、私共の店では<ピンクの日>と呼んでいたご予約の日。
あれほど、お天気でありますように!と願っておりましたのに、昨日の東京は大雨。
午後には雷も鳴るという最悪なものでした。
さて、この雨の中、<ピンクのお客様>は、ご予定通りにピンクのお着物でご来店になるでしょうか。
と、その前に
<着物注意!ピンク以外>との店長の指示の元、私は何を着るべきか。
チト、悩みました。
黒子のように地味に徹するか、着物好きな方に関心を持って頂けるように少し攻めるべきか、、、
この時期にピンクのお着物となると、きっと桜のお着物だと思うので、桜の柄は避けるべきでしょう。
いや、紺の着物で、裾回しに桜の小紋が付いているものがあって、歩くと翻ってチラッと見えるのですが、以前、お若いお客様に ”可愛いですね” とおっしゃって頂いたことがあります。
もしも、気付いて頂いたら、 ”やはり、この時期は桜!ですねぇ” と意気投合するか。
いえいえ、やはり、桜は全面禁止!裏生地でもやめましょう。
柄の細かい小紋で、せめて春らしい色合いの着物にしましょう。
迷った末に選んだ着物です。
母のお下がりのポリエステルの着物です。
なにせ、大雨でした。
裾を上げて、上には二部式着物の下を巻いて出かけました。
この帯は、締めやすく、着物の色とも合わせやすいので、ヘビーローテーションでした。
胴の部分が擦れてしまったのですが、諦めきれず、今日は、逆手に結んでいます。
普段は、交差させるだけで、結ぶことも、捻じることもしないのですが、逆手にすると、とたんにどこを引いたらキュッとなるかも???になってしまうので、結びました。
帯揚げはオレンジ。帯締めは着物の色に近いモスグリーンを選びました。
先輩仲居さんも、悩んだとのことです。
ピンク、花柄を避けて、紫がかったグレーのお着物に、オフホワイトの帯を締めていらっしゃいました。
では、主役の登場!ピンクのお客様です。
雨が強く降る中、ご予定通りお着物でご来店になりました。
ん?桜ではありません。
ピンクというより、サーモンピンクの色無地です。まあ、ピンクですね。
”どうしても、着物が着たかったんですよねぇ~” (きゃぴきゃぴ)
を、想像しておりましたが、落ち着いたご年齢のお客様でした。
大事なホワイトデーのデートよりも、もっと大切な特別なデートかもしれません。
一番奥のテーブルにご案内して、あとは、極力お二人のお邪魔にならないようにしておりました。
デザートをお出しするときに、やはり多少お邪魔ではあっても、お着物のことには触れたいと思い、先ずは彼氏さんの方に
”デートの時にお着物でいらして頂くと、特別な感じで嬉しゅうございましょう。”
と、お声をかけてみました。
”はい。” (にっこにっこ)
ーーーおおお、嬉しそう。
”ピンクのお着物をお召しと伺っておりました。春らしくてよろしゅうございますね。”
よく見ると、色無地のお着物の地紋は、さや型にお花もある綺麗な織のものでした。
”綺麗な織柄の色無地でございますね。”
”本当は、桜の着物を着たかったんですけど、この雨なので、これにしました。
洗えるきものです。”
ーーーそうなのっ!侮れないわ。東レのシルックかしら?
ーーーでも、。予想も外れていた訳ではなかったのですね。
ーーーやはりこの時期は桜の!ですよね
”そうなんですか。素敵です。
あいにくの雨ですが、どうぞごゆっくりなさって下さい。”
お見送りは、先輩仲居さんがして下さったのですが、笑顔でお帰りになったと伺いました。
ほっと致しました。
と、だいぶ時間が過ぎた時に、今は隣のレストランと両方を見ている店長がホールを覗かれて、”あれ?着物着てないね。”
”別のお客様です。ピンクのお客様はもう、お帰りになりました。”
”そっかぁ”
残念そうに戻られました。