絽も、紗も、からみ織(もじり織)という技法を使って、生地に隙間を作っているものです。
横糸の間に縦糸を絡(から)ませて(ねじって)織っていくことで、横糸が接触しないようになり、生地に目が出来て、通気性も良くなるという訳です。
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下に白い紙を当てたので、白く見える部分は開いているということです。
横糸一本毎に隣合う縦糸を絡ませています。
絡ませた部分が邪魔をして、横糸どうしは接することがないのです。
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絽は、紗の変わり織として生まれたもので、紗に定期的に平織りを入れたものです。
紗では繊細な柄を美しく染めるのが難しく、間に平織りを入れる絽が生まれたということです。
平織りの部分の横糸の本数で、3本絽、5本絽、13本絽などと呼ばれます。
本数が少ないほど透ける感じになります。また、それによって着る時期も微妙に変わります。
絽目が不規則に変わる<乱絽(らんろ)>、隙間を縦糸方向に作る<経絽(たてろ)>もあります。
美しい染柄が可能になった絽は、留袖、訪問着などの正装用として使われています。
フォーマルには絽。紗は趣味の着物です。
絽と紗は、着る時期も少し異なります。
絽は薄物の時期である7月と8月。
季節を少し早めに取り入れることを思えば、6月の20日過ぎからお召しになれるでしょう。
絽よりも更に透ける生地である紗は、盛夏に着るに相応しいので、7月の後半~8月の半ば頃でしょうか。
その年の気候によっても変わってきます。
染での柄付けには向かなかった紗ですが、柄を織り込むものが出来ていきます。
これを紋紗(もんしゃ)と言います。
紗は織という印象は、この紋紗からくると思います。
絽も紗も元々は絹織物でしたが、現在では、絹100%の物の他に、綿やポリエステルの物、また絹とポリエステルの交織もあります。
更に、絽と紗の共通した最大の特色である<からみ織>ですが、量産しずらいことから、紗に似せた平織が出来てきました。
それを<模紗(もしゃ)>とか<疑紗(ぎしゃ)>とかいうそうです。
確かに、近頃は、生地を見ても良くわからず、母に聞くと、”う~ん、紗のつもりじゃないの” などの答えで、端切れが悪いと感じておりましたが、こういうことだったのかと納得しました。
また、化学染料が進歩しています。
紗を真似た平織りの<模紗>に、美しい小紋柄を染めるのは容易になりました。
夏の着物のポイントは、いかに涼しげに装うかです。
絽や、紗の軽やかに透ける着物で、見て下さる方にも涼を感じて頂けたら、盛夏の着物ぐらしでこれに勝る喜びはありません。